栗山に挑戦できる環境があったから。ものづくりから生まれた人の繋がりと憩いの場

挑戦できる環境があったから。ものづくりから生まれた人の繋がりと憩いの場

取材:柴田涼平 執筆:安達俊貴 写真:小林大起


ーー あなたが未来に残したいものは?

いつ来てもみんながワイワイできる場所。

そう語るのは、北海道栗山町でAmuClover(アム・クローバー)を運営する

クラフトY(春山由香)さんです。

Amu Cloverは、エコクラフト (紙ひも) を使ったカゴやカバンなどの作品を展示・販売するお店。作品制作の教室も開講しています。エコクラフトの師匠である斎藤ひろみさんと、2022年9月にオープンしました。

ゆったりと、一言ひとことを吟味するようにインタビューに答えてくれた春山さん。決して多くはない言葉の中に、「一度決めたら揺るがない」ものづくりへのこだわりが見え隠れします。

明るくにぎやかな店内の空気を感じながら、春山さんが未来に残したいものを伺いました。

目次

友人の誘いをきっかけにハマるものづくり

─ エコクラフト作りを始めたきっかけを教えて下さい。

4年前、子育てが一段落して時間に余裕ができたので、趣味を探していました。ちょうど友人から「カバン作りやってみない?」と誘われて、斎藤さんが開いていた教室に行ったのがきっかけです。

それまでは自分がものづくりに携わるなんて、思ってもいませんでした。子どもたちが幼稚園に上がったときに巾着を作った程度で、楽しんでやるものではありませんでした。

─ 「ものづくり」が最初から好きだったわけではないんですね。はじめてエコクラフトでカバンを作ったときはいかがでしたか?

とても楽しかったです。素材の色も自分の好きなものを自由に選べて、ワクワクしながら作ったのを覚えています。

最初に作ったのはカバンで、1日くらいで作ることができました。最初は歪んでしまったりするのですが、結構うまくできたんですよ。

その後も作品づくりを続け、増えた作品をどうしようかと考えたときに、せっかくだから販売しよう、と思い立ちました。それが現在の活動につながっています。

挑戦する仲間がつながる、栗山の暮らし

─ 現在は美唄在住とのことですが、ご出身は栗山なんですね。小さいころの春山さんについて教えて下さい。

小学校に上がる前は、毎朝6時に起きて、補助輪の取れていない三輪車で町内一周するような子どもでした。

─ すごくアクティブな習慣ですね!

今と比べて道路が舗装されていないところも多かったので、補助輪をカラカラ鳴らしながら走っていましたね。

小学校からはソフトボールを始め、中学高校とずっと続けました。体を動かすのが好きでしたね。

─ ずっと続けられたんですね。これと決めたものがあったら没頭できるタイプですか?

そうですね。時間を忘れて、ソフトボールのことばかり考えて取り組んでいました。作品を作っているときも、楽しいという気持ちすらなく、ほとんど無になって没頭しています。

なので、スポーツをしているときとものづくりをしているときの感覚は、一緒かもしれません。

─ 栗山の暮らしや栗山の特長はありますか?

栗山は千歳も札幌も近くて便利ですよね。昔は仕事が終わってからちょっと札幌に遊びに行ったりなんかしてました。

あと栗山町は、くりやまクリエイターズマーケット(※)や飲食店にチャレンジできるシェアキッチンなどもあって、挑戦できる場所が多く、ありがたいなと思っています。

私もお店を開くきっかけになったのも、くりやまクリエイターズマーケットでした。

(写真:くりやまクリエイターズマーケット店内の様子)

※くりやまクリエイターズマーケット: 栗山町が運営するハンドメイド雑貨店。ものづくりを中心に活動している町内外の「くりエイター」が日替わりでお店番をし、栗山町にちなんだハンドメイド雑貨を販売しています。

─ どのような経緯でくりやまクリエイターズマーケットに出展することになったのですか?

栗山の実家に帰るとき、いつも広報誌をチェックするのですが、あるときマーケットへの出店の募集がたまたま載っていたんです。

作品の販売を思い立ったころでしたから、応募して、何点かを店頭に置かせていただきました。

─ スピード感がすごいですね。出店してみていかがでしたか?

人とのつながりができるのがいいですよね。一緒に出店したり、お店番をしてもらった方からイベントのお知らせを頂いたりして、作家さん同士のつながりが持てました。くりやまクリエイターズマーケットで興味を持ってくださったお客さんが、このお店に来てくださったこともありました。

─ チャレンジしやすい環境を活用して創作を続けているんですね。

2022年の夏には仲間と一緒にカルチャープラザを借りて、ハンドメイドのイベントも行いました。建物の2階部分をギャラリーにして、町内外から集まった7〜8人の作家さんが、展示や販売を行いました。

─ そういったイベントの主催をすることは多いのですか?

いえ、そのときが初めてでした。普段は他の人が主催するイベントに出させていただくばっかりで。

─ 主催してみていかがでしたか?

やっぱり大変でしたね。フライヤーを自分たちで作ったりして、なるべくお金をかけないようにしました。

とはいえそのイベントも、作家さん同士やお客さんとつながるきっかけになりました。この日をきっかけにお店に来てくれる人もいらっしゃいましたね。

猛スピードで進めた、師匠との店づくり

─ くりやまクリエイターズマーケットでの出店から、ご自身のお店を持つことになるまでの経緯を教えて下さい。

くりやまクリエイターズマーケットに作品を置いていた一方で、昨年ごろからカルチャープラザの会議室を借りて、エコクラフトの教室も始めました。当初は月1回の生徒さんだけだったのが、月2回、3回と増えていきました。

そうなると、毎回カルチャープラザへ素材を運ぶのが大変なので、「せっかくだから栗山でお店を出そう」と思うようになりました。いろいろと場所を探して、ここに落ち着きました。

─ 自分の場所を構えたほうが、荷物を運搬しなくて済みますね。

そうなんです。生徒さんには、たくさんある素材の実物を見て、一番気に入ったものを選んでほしいという想いがあります。その分、運ぶ量がすごくなっちゃって。

自分の場所であれば、素材も作品もすべてお見せできるので、教室もより楽しくなると思うんです。

─ 僕自身、手芸には苦手意識があるのですが、ここにいるとなんだかワクワクしてきます。

作品や材料に囲まれると、作品のイメージが湧きますからね。

─ 場所を持つのは大きな挑戦だと思いますが、そのときの心情を教えて下さい。

あまり悩みなどはありませんでしたね。そもそも性格が猪突猛進なので。とりあえず物件を2人で見て、決めて。それだけでした。家に帰ったあと、考え直すことも少しだけ頭をよぎりましたが、決めた以上はやろう、という感じでした。

ここを見つけたのが7月の下旬。会社には8月いっぱいで退職すると伝え、有給消化期間に内装をDIYして、9月にオープンしました。

─ ものすごいスピード感ですね。師匠と弟子という関係性で、一緒にお店をやるという点についてはどうですか?

それまでは自分で作って販売するだけで、人に教える経験がほとんどありませんでした。斎藤さんは経験が10年以上もあるので、教室ではサポートに入って、その教え方を習っています。

(写真:制作の様子)

師匠と弟子という関係ですが、斎藤さんとは同い年なんですよね。お互い50歳になるまでに自分の店を持ちたいという夢があり、それなら今やろうと、一緒に運営することを持ちかけました。

─ 二人三脚で出店を進めたのですね。なんだか青春ですね。

お互い子育ても終わりましたから。自分たちの好きなことを好きなだけやっています。

─ ものづくりを伝える上で、大切にされていることを伺いたいです。

生徒さんの個性が惜しみなく出せるように、素材を取り揃えておくことですかね。

特に子どもは個性が本当に豊かです。一人ひとりの作品が本当に型破りで。最初は単純な色しか知らないのですが、クラフトバンドにもいろんな色があります。混ざったような色があることや、組み合わせもできることを伝えると、驚きだったり、ワクワクといった感想を持つようです。

─ 自然と素材選びも楽しくなりますね。

はい。クラフトバンドを選ぶところから楽しんでもらえるよう、できるだけ多くの素材を用意しています。

─ 大人の生徒さんはどうですか?

大人の生徒さんの中には、以前の私のように、自分にもできるなんて思っていない方がいます。そういった方でも、自分でこんなカバンが作れるんだと、感動されるようです。

それでここに通ってくれたり、お友達を誘ってくれたりしています。

いらっしゃいませ、より「おかえり」を

─ 最後に、春山さんが未来に残したいものを教えてください。

このお店を、いつ来てもワイワイできるような場所として残したいです。ちょっとおしゃべりしてお茶して帰るだけでもいい。気兼ねなく来れる場所でありたいですね。

─ もうすでに和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気があって、春山さんのお言葉通りの場所になっているなと感じます。

くりやまクリエイターズマーケットに来てくれた方が、散歩がてらにお店に吸い込まれていったり、作家の仲間が開店の際にお花をくれたり。待ち遠しいと感じてくれる方がいるのはやっぱり嬉しいです。

─ 作品だけじゃなくて、生徒の方やイベント参加者が楽しそうにしている様子から、春山さんが人のつながりを大切にしていることが伺えます。

人と人がつながっていくのを見るのは好きですね。私自身は初対面の人と話すのが得意ではありませんが、斎藤さんがいろんな人と朗らかに話してくれるので、その話題に入って楽しむ、といった感じです。

─ 素敵な役割分担ですね。

あとは、前回主催したハンドメイドのイベントも、規模を大きくしてまた開催したいと思っています。最近はハンドメイドとキッチンカーを同時にやっている方もいらっしゃるので、そういった方々も巻き込んでいけたらいいなと思います。

キッチンカーで買ったものを食べ飲みして、作品を見て、ワークショップに参加して。栗山で1日中過ごせる感じのイベントを考えています。

イベントでもお店でも「いらっしゃいませ」というより、「おかえり」という雰囲気を大切に。お店のお客さんはもちろん、栗山に遊びに来てくれた人たちにも伝えていきたいです。

■クラフト手芸工房「Amu Clover」

住所:栗山町中央3丁目257-1(ラッキー栗山店向かい)
https://www.instagram.com/amu__clover/

■クラフトY

春山さんの活動や作品はこちらからご覧いただけます。
https://www.instagram.com/craft_y1124/?hl=ja

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この記事を書いた人

フリーのライター兼エンジニア兼ヨガ講師。
接しやすい文章を書きます。

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